機密情報漏洩
1 はじめに
従前,機密情報漏洩としては,社員が企業のノウハウ(設計図等)や紙媒体の顧客名簿などをコピーして競合他社の社員に渡す等の形態が想定されていました。
しかし,各種データのデジタル化にともない,漏洩対象となる情報量が莫大となっており,かつ漏洩経緯も,ウィルス,不正アクセス,USBなど記憶媒体にコピーして持ち出すなど機密情報漏洩の形態も多種多様化しています。
したがって,各企業としても平時,有事ともに機密情報漏洩に備える必要があります。
2 機密情報とは
企業に存在するあらゆる情報が機密情報と扱われるわけではありません。
機密情報とは,不正競争防止法の「営業秘密」と同義といえますが,同法は,「営業秘密」を「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」と定義しています。この定義からすると,「機密情報(営業秘密)」というためには,以下の三要件を満たす必要があります。
- 秘密として管理されていること
秘密として管理されているというためには,その情報にアクセスできる者が制限されていることと,その情報にアクセスした者にその情報が秘密であることが認識できるようにされていることが重要です。
- その情報が有用であること
「有用」とは,正当な事業活動にとって,役に立つことをいいます。
例えば,設計図,顧客名簿,販売マニュアル,接客マニュアル等が典型例です。
なお,脱税の手口など,法の保護に値しないものは,正当な事業活動に有用とはいえないので,判例上も,営業秘密とはいえないとの判断もされています。
- 公然と知られていないこと
「公然と知られていない」とは,一般的にはその情報を入手できない状態にあることを言います。
したがって,企業や官公庁のHPに記載されているような情報は,「公然に知られていない」とは言えません。
3 機密情報漏洩によるリスク
一旦,機密情報が漏洩してしまうと,その企業は様々な対応に追われます。例えば,個人情報を含めた顧客情報が漏洩した場合,顧客向けに謝罪や賠償,今後の安全性の保証を含め様々な対応をしなければなりません。また,企業の評判も常に気にしつつ,ふさわしい対応を迅速にしなければなりません。このような対応を適確に行うためにも,専門家のアドバイスは必要となります。
4 機密情報漏洩時の対応
いざ,機密情報が漏洩した場合,例えば,以下の対応が考えられます。
- 原因の究明
まず,情報漏洩の原因を究明するする必要があります。
そのために,パソコンのログを保全する解析業者に依頼する,タイムカード等出勤記録を確認するなどの作業が必要となることもあります。
- 顧客に対する対応
仮に,顧客情報が漏洩し,その情報の中に顧客の個人情報が含まれていることが判明した場合は,その旨を早急に,顧客に対して通知しなければなりません。また,企業HPに「お詫び」を掲載するなど,迅速な対応が求められます。
- 漏洩者に対する対応
実際に機密情報を漏洩した者に対しては,再発防止のためにも,企業の評判の維持のためにも,損害賠償請求,刑事告訴など断固たる対応する必要があります。機密情報を漏洩した者に対しては最高で,懲役10年,若しくは罰金2000万円(平成27年改正)という重い刑が課されます。
- 情報領得者に対する対応
機密情報を領得した者が,その情報を使って営業をしている場合は,営業の差止め請求,損害賠償請求,刑事告訴などで対応することとなります。
- 自社に対する対応
原因を究明した後は,再発防止策を策定し,また社内システムの再構築をする必要があります。そのために就業規則を変更することも考えられます。
5 おわりに
いずれにしろ,機密情報漏洩は,その企業にとって一大事であり,対応を誤ると,存亡の危機にまで追い込まれる可能性のある重大な出来事です。
当事務所は,機密情報漏洩につき,企業側で告訴をし,かつ,同時に顧客対応をしたことがあるなど,多くのノウハウを有しております。
初回相談はかかりませんので,一度,お気軽にご相談ください。