残業代請求への対応
使用者は,労働者に対し,法定労働時間(1週間につき40時間,1日につき8時間)を超えて労働させることができないのが原則です。もっとも,法は,この例外として,一定の場合に法定労働時間を超える労働(時間外労働)をさせることができると規定しています。この時間外労働に対しては,割増賃金が支払われなければなりません。これがいわゆる残業代です。
1 時間外労働が有効であるための要件
使用者が,労働者に対し,法的に有効な時間外労働をさせるためには,労働基準法上の要件を満たしていること及び契約上の根拠があることが必要です。すなわち,実際に時間外労働を命じるためには,36協定の締結・届出などの労働基準法上の要件を満たすことに加えて,労働契約上時間外労働を行う義務を設定しておく必要があります。
2 割増賃金(残業代)
労働基準法上の時間外労働については,通常の労働時間又は労働日の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内で命令の定める率以上の率で計算した割増賃金が支払われる必要があります(労働基準法第37条1項本文)。ただし,時間外労働時間が1か月につき60時間を超えた場合においては,その超えた部分の労働については,5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(同ただし書)。ここで,労働基準法上の要件を満たさずに行われた時間外労働についても,割増賃金の支払義務は当然及ぶと解釈されていることに注意する必要があります(判例)。
また,深夜労働,すなわち,午後10時から午前5時までの間の労働については,2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
さらに,時間外労働と深夜労働とが重複した場合には,割増率は合算され,5割以上(時間外労働が月60時間を超えた場合には,その部分につき7割5分以上)の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法施行規則20条)。