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一般法務

法人の設立

法人を設立するときには、設立の理念や目的はもう決められているでしょう。それらの理念や目的に従って、最適な法人の種類を選んで事業を始めることになります。
法律に基いて法人を設立するには、株式会社や合同会社など、法人の形態を決めることになります。

 

法人とは、法律で認められた独立した主体として取引行為などを行うことができる立場です。法人は、何もなかったところっから、突然社会に参加する「人格」が誕生することになるため、その存在を確たるものにする必要があり、「登記」をしなければなりません。
登記には、目的、商号、本店の所在地など、必ず決めなければならない内容があります。

定款の作成

株式会社には、必ず定款があります。
法人の設立には、公証人が認証した定款が必要になるからです。
定款には、株式会社の目的、商号、本店の所在地、出資額などの形式的に重要なものから、株主総会や役員に関する取り決めなど、株式会社の組織的に重要なものまで、様々なことが記載されます。
そして、一度定めて定款は株主総会の決議がなければ変更することはできません。定款には会社の重要事項が記載されていますので、いざ問題が発生したときには、会社法の他、最終的には定款の定めに従って対処されることになります。定款の内容によって、支配権の帰趨が決まってしまうことさえあり得ます。

 

法人によっては、公開されている雛形をそのまま用いて定款としているところも珍しくありません。雛形は、無難な内容で作成されていることが多いですから、決定的に問題が生じることはないかもしれません。しかし、雛形が個々の法人の定款として適しているとはいえません。
雛形の定款も、多くの場合法律的には適正な定款として用いることができますが、いざ定款に従って対応しようとしたときに、定款が会社の実態にあっておらず、株主総会や取締役会の開催や運営がスムーズに行えなかったりすることも珍しくありません。

 

定款は、法人設立時に作成したきりで、その後会社が成長して、会社の現状と合わなくなっているときもあります。定款は、どのような会社に育てていくかの理念に基いて会社の骨子を定めることになるのですから、ときおり見直すことが大切です。

株主総会の運営指導

株主総会は会社の最高意思決定機関です。株主の構成と役員の構成が重なる親族会社などでは、取締役会が重視され、株主総会が軽視されることもありますが、意見が割れたときには最終的には株主総会で決めなければならないことは多くあります。

 

株主総会は、会社の重要事項を決議する場であり、株主が意見を述べる議論の場でもあります。株主の言動が、予定されていないものであったりすると、軽んじて扱ってしまったり、逆に特定の株主にその場が引きずられてしまい、株主総会が混沌としてしまうこともありえます。
株主を軽視した取扱いをしてしまうと、後になって株主総会決議に瑕疵があるとして、株主総会をやり直さなければならなかったり、裁判になるリスクが消えなかったりと、会社経営が不安定になります。

 

株式会社の中には、適切な手続を経た株主総会を行わず、株主総会議事録だけを作成しているところもめずらしくありません。日頃は問題にならないかもしれませんが、いずれは株主間で意見が対立して、株主総会決議の重要性が意味を持つときが来ます。
そうしたときに、経営者側としては、それまでの感覚で形骸化したまま株主総会を進めてしまうと、他方の株主から株主総会が適正に開催されていないとの異議を出されてしまいます。
仮処分や訴訟になると、会社にも負担が生じることになり、ときには取引先との取引に事実上の影響が出ることもあります。
裁判所に対しては、いつもどおり議事録を作ったとの理屈は通りません。裁判所は、法律に基づいて判断しますので、適切に株主総会を行っていないと、場合によっては、仮処分決定が出され登記され、内紛が公にされてしまうこともあり得ます。

 

むしろ、法律及び定款に従って定期的に株主総会を開催し、日頃会社経営に関わっていない利害関係者の考え方を知るための良い機会とすることが求められています。株主総会を適切に経営することが、会社という仕組みを使う最初の一歩になります。

各種契約書の作成・チェック

会社として取引をするときには、常に契約を締結していることになります。契約に従って、サービスや商品を提供したり、代金を支払うことになります。

 

日本では、契約書がなくても契約は成立します。しかし、特に、取引の規模が大きかったり、内容が複雑な場合は、契約書を作ることが大切です。契約書が作成されていれば、契約内容に疑問が生じたときは契約書を確認すれば解決することができます。

 

業界の習慣や、取引相手との力関係などによっては、契約書を作成することを言い出しづらい場合もあります。契約書を作る習慣がない相手に対して契約書の作成をもちかけると、「信用していないのか」といった反応を示されることがあります。
しかし、口頭だけの約束で取引を始め、細かい話は後から決めれば良いとしていると、なかなか契約書を作る機会はありませんし、取り決めを文書化する機会もありません。いざ、合意を確認しようとすると、落ち着いて話ができる状況ではなく、かえって時間も手間もかかり、紛争が長期化してしまうことがあります。
契約書は、お互いに信頼関係があるときにこそ作るものです。

 

取引先から、契約書を示されて、その契約書に押印をしてよいか迷うこともあると思います。これは、契約書の重要性を理解している正しい反応ですし、取引の中に何か心配事があるからこその考えであると思います。
契約書のチェックは、事業の専門家である本人と、法律の専門家である弁護士が双方で協力して確認すべき事柄です。
契約書をチェックするときには、契約書の内容が読みやすく分かりやすいかは、あまり重要ではありません。確認すべきは、重要なことが決められているかどうかです。

 

  • 契約の内容が一義的で明確か
  • 契約書から取引内容が具体的に特定できるか
  • 契約書に従って取引を行うことができるか
  • 契約の内容に法律違反がないか
  • 一方が過大な負担を負っていないか
  • 取引を終わるための方法が書かれているか

といった視点から、契約書の内容を確認していくことになります。
契約書の書かれていないことは、法律の原則が適用されますので、適用される法律も確認します。
ときには、市販の契約書を用いることもあります。
市販の契約書は、典型的な契約について標準的な内容で作成されていて、契約書作成の手間を軽減してくれます。しかし、必ずしも最適のものではありません。特に決めなければならないことが、決められていなかったりすることもあります。
標準的な内容であれば最適というわけではありませんので、御社の具体的な考え方を盛り込んでいくことが大切です。

公益通報への対応

企業内不祥事への対応が社会問題化し、平成16年に公益通報者保護法が成立しました。法律名からは、どんな事柄でも公益のためには通報を推奨するような印象を受けるかもしれませんが、法律の内容は必ずしもそうではありません。公益通報者保護法は、通報者を保護することももちろん目的とされていますが、通報を受ける企業に対してもその指針となるものです。

 

公益通報とは、内部通報や内部告発とも言われます。このような通報は、以前は、不正や危険性に気がついた従業員が、職を賭して通報に至るという印象がありました。これは、通報を行った結果、その従業員は企業イメージを損なった、あるいは会社の一体感を損なった裏切り者とされ、左遷させられたり退職に追い込まれたりされるという事情があったからです。
しかし、公益通報者保護法の定める通報対象事実は、国民の生命、身体、財産に関わるものに限定されています。そのような通報は、社会としても、会社としても本来は望ましいことであるはずなのです。

 

公益通報者保護法の柱は、公益通報者に対する不利益な処分を明確に禁じたことです。
これは、公益通報者を保護することはもちろんですが、公益通報自体にも価値があり、公益通報が望ましいものであるとの考え方によるものです。
しかしながら、現実的に従業員が会社に対して公益通報をする状況を考えると、従業員が会社の誰に公益通報をするかがわからないなど、従業員としても公益通報に二の足を踏む可能性がありますし、会社としても適切な者が公益通報を受けることができるかわかりません。
そのため、会社として、公益通報制度を整えることが求められます。従業員からの公益通報を受け付ける体制を整え、その内容により直ちに実効性のある対応をとることができる組織を作ることになります。
公益通報者を保護することが法律で定められているとはいえ、公益通報者やその通報内容を目的なく広めて、強いて無用な疑心暗鬼や軋轢を生む必要はありません。そのためにも、公益通報制度を整備し、公益通報についての情報に触れる者を限定し、公益通報者を保護しつつ、会社として情報をコントロールし、共有すべき情報と、共有すべきでない公益通報者の情報などを区別していくことになります。

 

適切な公益通報制度を整えれば、より大きな不祥事を未然に防ぐことに繋がりますし、 組織の自浄作用への信頼が育てば経営トップが会社の問題点を早期に把握し、改善することにつながっていきます。
公益通報制度は、通常の経営組織から一定程度独立していることが望ましいです。そのため、独立した部署を設けたり、本社や親会社直属の窓口を設けたり、又は法律事務所など外部の組織を窓口として利用するといった工夫を行うことが可能です。

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