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労働問題

問題社員対策

1 予防策の重要性

ひとたび労働関連紛争が発生しますと,労使間双方に派生的な不利益が生じ得ます。問題社員の存在等により他の労働者が不満をもち,仕事のモチベーションが低下すると,その能力の十分な発揮に支障が生じ,ひいては優良社員の離職といった事態を招きかねません。また,使用者側にとっても,紛争解決コストが生じ,裁判ともなれば会社の社会的評価が下がるリスクがあります。これらのことからしますと,問題発生後に紛争解決するよりも,事前に紛争解決システムを構築しておくことが重要といえます。

 

まず,使用者としましては,労働者の意見・要望を受け止めるシステムを構築することが効果的です。労使協議機関,職場懇談会,社員会や,苦情処理制度,提案制度,自己申告制度,従業員意識調査,人事担当者による面会,個人面談等を設けることが考えられます。このような多様なコミュニケーション手段を設けることにより,問題が顕在化する前に予防することが可能となります。

 

また,企業の社会的責任(SCR)の一環として使用者が労働環境の整備をすることも重要です。これは,企業が自発的にコンプライアンスや社会貢献を進める活動を意味するもので,これにより,紛争を未然に防ぐことによる紛争解決コストの削減と労働者のモチベーションの向上及びそれに伴う企業の生産性の向上とともに,外部的にも企業の社会的評価が向上し,優秀な人材を確保・養成することが期待されることが近時指摘されています。

 

 

2 各種紛争解決システム

⑴ 行政による紛争解決

使用者に対しても,各都道府県労働局により設置された総合労働相談コーナーの利用,都道府県労働局長による個別労働関係紛争についての助言・指導,紛争調停委員会によるあっせん等による紛争解決手段があります。

 

 

⑵ 労働委員会による紛争解決

労働関係調整法は,当事者による労働争議の自主的解決を援助するため,労働委員会による労働争議の調整制度を定めています。ここにいう労働争議とは,労働関係上の当事者間の主張の不一致により争議行為が発生している状態又は発生するおそれがある状態をいいます。この調整制度の内容としては,あっせん,調停,仲裁などがあります。

 

 

⑶ 裁判所による紛争解決

ア 労働審判手続

労働審判手続とは,労働紛争が発生した際に当事者(使用者,労働者)の申立てにより,裁判官(労働審判官)1名と労働関係の専門的な知識経験を有する者(労働審判員)2名で組織された労働審判委員会で紛争処理をする手続をいいます。これは,労働関係の専門知識経験を活かして,労働紛争の実情に即した迅速・適正な解決を図ることを目的とした制度です。労働審判委員会は,速やかに争点及び証拠の整理を行い,原則として3回以内の期日において審理を終結しなければなりません。

 

イ 民事訴訟

通常の民事訴訟手続を利用することができます。ここでは,慎重かつ本格的な審理が行われるため,真実追及に資する反面,手続が重くなるというデメリットに加え,前述のとおり企業の社会的評価が下がるリスクも生じ得ます。もっとも,民事訴訟手続において和解により解決する事例も多いです。

 

ウ 少額訴訟・民事調停

訴額60万円以下の金銭支払請求事件については,簡易裁判所において原則1回の口頭弁論で審理される少額手続訴訟を利用することができます(民事訴訟法第368条)。
また,民事調停法に基づいて通常の民事調停を簡易裁判所で行うこともできます。

 

エ 保全

被保全権利の存在と保全の必要性が認められる場合には,後の訴訟の準備のために,簡易迅速な審理により裁判所が仮処分や仮差押えを命じることによって,権利の保全を図ることができます。

 

 

⑷ ADRの活用

訴訟に代わる紛争解決手続として,労働紛争についても私的仲裁システムを利用することが考えられます。弁護士を同席させ即時に意見を求めることにより,効果的な活用が期待できます。

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