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株主総会の運営指導

株主総会は会社の最高意思決定機関です。株主の構成と役員の構成が重なる親族会社などでは、取締役会が重視され、株主総会が軽視されることもありますが、意見が割れたときには最終的には株主総会で決めなければならないことは多くあります。

 

株主総会は、会社の重要事項を決議する場であり、株主が意見を述べる議論の場でもあります。株主の言動が、予定されていないものであったりすると、軽んじて扱ってしまったり、逆に特定の株主にその場が引きずられてしまい、株主総会が混沌としてしまうこともありえます。
株主を軽視した取扱いをしてしまうと、後になって株主総会決議に瑕疵があるとして、株主総会をやり直さなければならなかったり、裁判になるリスクが消えなかったりと、会社経営が不安定になります。

 

株式会社の中には、適切な手続を経た株主総会を行わず、株主総会議事録だけを作成しているところもめずらしくありません。日頃は問題にならないかもしれませんが、いずれは株主間で意見が対立して、株主総会決議の重要性が意味を持つときが来ます。
そうしたときに、経営者側としては、それまでの感覚で形骸化したまま株主総会を進めてしまうと、他方の株主から株主総会が適正に開催されていないとの異議を出されてしまいます。
仮処分や訴訟になると、会社にも負担が生じることになり、ときには取引先との取引に事実上の影響が出ることもあります。
裁判所に対しては、いつもどおり議事録を作ったとの理屈は通りません。裁判所は、法律に基づいて判断しますので、適切に株主総会を行っていないと、場合によっては、仮処分決定が出され登記され、内紛が公にされてしまうこともあり得ます。

 

むしろ、法律及び定款に従って定期的に株主総会を開催し、日頃会社経営に関わっていない利害関係者の考え方を知るための良い機会とすることが求められています。株主総会を適切に経営することが、会社という仕組みを使う最初の一歩になります。

各種契約書の作成・チェック

会社として取引をするときには、常に契約を締結していることになります。契約に従って、サービスや商品を提供したり、代金を支払うことになります。

 

日本では、契約書がなくても契約は成立します。しかし、特に、取引の規模が大きかったり、内容が複雑な場合は、契約書を作ることが大切です。契約書が作成されていれば、契約内容に疑問が生じたときは契約書を確認すれば解決することができます。

 

業界の習慣や、取引相手との力関係などによっては、契約書を作成することを言い出しづらい場合もあります。契約書を作る習慣がない相手に対して契約書の作成をもちかけると、「信用していないのか」といった反応を示されることがあります。
しかし、口頭だけの約束で取引を始め、細かい話は後から決めれば良いとしていると、なかなか契約書を作る機会はありませんし、取り決めを文書化する機会もありません。いざ、合意を確認しようとすると、落ち着いて話ができる状況ではなく、かえって時間も手間もかかり、紛争が長期化してしまうことがあります。
契約書は、お互いに信頼関係があるときにこそ作るものです。

 

取引先から、契約書を示されて、その契約書に押印をしてよいか迷うこともあると思います。これは、契約書の重要性を理解している正しい反応ですし、取引の中に何か心配事があるからこその考えであると思います。
契約書のチェックは、事業の専門家である本人と、法律の専門家である弁護士が双方で協力して確認すべき事柄です。
契約書をチェックするときには、契約書の内容が読みやすく分かりやすいかは、あまり重要ではありません。確認すべきは、重要なことが決められているかどうかです。

 

  • 契約の内容が一義的で明確か
  • 契約書から取引内容が具体的に特定できるか
  • 契約書に従って取引を行うことができるか
  • 契約の内容に法律違反がないか
  • 一方が過大な負担を負っていないか
  • 取引を終わるための方法が書かれているか

といった視点から、契約書の内容を確認していくことになります。
契約書の書かれていないことは、法律の原則が適用されますので、適用される法律も確認します。
ときには、市販の契約書を用いることもあります。
市販の契約書は、典型的な契約について標準的な内容で作成されていて、契約書作成の手間を軽減してくれます。しかし、必ずしも最適のものではありません。特に決めなければならないことが、決められていなかったりすることもあります。
標準的な内容であれば最適というわけではありませんので、御社の具体的な考え方を盛り込んでいくことが大切です。

公益通報への対応

企業内不祥事への対応が社会問題化し、平成16年に公益通報者保護法が成立しました。法律名からは、どんな事柄でも公益のためには通報を推奨するような印象を受けるかもしれませんが、法律の内容は必ずしもそうではありません。公益通報者保護法は、通報者を保護することももちろん目的とされていますが、通報を受ける企業に対してもその指針となるものです。

 

公益通報とは、内部通報や内部告発とも言われます。このような通報は、以前は、不正や危険性に気がついた従業員が、職を賭して通報に至るという印象がありました。これは、通報を行った結果、その従業員は企業イメージを損なった、あるいは会社の一体感を損なった裏切り者とされ、左遷させられたり退職に追い込まれたりされるという事情があったからです。
しかし、公益通報者保護法の定める通報対象事実は、国民の生命、身体、財産に関わるものに限定されています。そのような通報は、社会としても、会社としても本来は望ましいことであるはずなのです。

 

公益通報者保護法の柱は、公益通報者に対する不利益な処分を明確に禁じたことです。
これは、公益通報者を保護することはもちろんですが、公益通報自体にも価値があり、公益通報が望ましいものであるとの考え方によるものです。
しかしながら、現実的に従業員が会社に対して公益通報をする状況を考えると、従業員が会社の誰に公益通報をするかがわからないなど、従業員としても公益通報に二の足を踏む可能性がありますし、会社としても適切な者が公益通報を受けることができるかわかりません。
そのため、会社として、公益通報制度を整えることが求められます。従業員からの公益通報を受け付ける体制を整え、その内容により直ちに実効性のある対応をとることができる組織を作ることになります。
公益通報者を保護することが法律で定められているとはいえ、公益通報者やその通報内容を目的なく広めて、強いて無用な疑心暗鬼や軋轢を生む必要はありません。そのためにも、公益通報制度を整備し、公益通報についての情報に触れる者を限定し、公益通報者を保護しつつ、会社として情報をコントロールし、共有すべき情報と、共有すべきでない公益通報者の情報などを区別していくことになります。

 

適切な公益通報制度を整えれば、より大きな不祥事を未然に防ぐことに繋がりますし、 組織の自浄作用への信頼が育てば経営トップが会社の問題点を早期に把握し、改善することにつながっていきます。
公益通報制度は、通常の経営組織から一定程度独立していることが望ましいです。そのため、独立した部署を設けたり、本社や親会社直属の窓口を設けたり、又は法律事務所など外部の組織を窓口として利用するといった工夫を行うことが可能です。

コンプライアンス

コンプライアンスという言葉が広まってきていますが、その理解は、人によって様々です。一般的には、法令遵守の意味合いで使われています。また、法令遵守を超えて、社会的要請や倫理的に望ましい体制までも含めて、コンプライアンスと言われることもあります。

 

法令遵守というと当たり前のこととも思われますが、大企業がコンプライアンス違反を指摘されて大きく報道され、信用を失う事件は珍しくありません。
ときには、必ずしも法律違反があるとはいえないときにも、倫理的に望ましくない行為があったとの印象が生じてしまうと、信用を失う自体になりかねません。
昨今の情報化社会において、法律違反が衆知される影響力は計り知れません。また、裁判所もインターネット上に広まった情報を削除することに必ずしも積極的ではありませんので、悪い評判は広まらないことが一番です。

 

法律というと、意味や効果が明確に定められているとの印象があるかもしれませんが、意味が広い言葉が使われていたり、定義が不明瞭な場合もあります。
そのような法律に対して、法令遵守を進めるには、法律の解釈をし、企業の活動が法律に抵触するかを専門的に判断しなければなりません。
経営には、素早い判断や勢いも大切ですから、法令遵守に関するリスクも判断材料にして、経営判断をしていくことになります。

 

また、社会的評価は、移ろいやすいものでもあります。以前は大きく問題とされておらず、むしろ当たり前の状態であったとされていた事柄も、ひとたび社会において問題意識が熟成されたとたんに、糾弾の対象になることもあります。
事前にリスクを把握するために、判断基準となるのはやはり法律や倫理的な問題意識になります。
例えば、サービス残業などと言われているものも、企業の債務不履行ですし、刑罰も定められている犯罪行為です。最近は、過労死認定の基準として問題視されていますが、いずれサービス残業自体に批判の目が行くことは十分に考えられます。

解雇

1 解雇の種類

民法上,労働者の解雇は原則として自由とされており,解雇の種類としては以下のものが挙げられます。

 

 

⑴ 普通解雇

普通解雇とは,下記⑵⑶以外の解雇をいいます。代表例としては,労働者の労働能力の低下を理由とする解雇が挙げられます。

 

 

⑵ 整理解雇

整理解雇とは,使用者が,経営上の理由により人員削減の手段として行う解雇をいいます。

 

 

⑶ 懲戒解雇

懲戒解雇とは,労働者による企業秩序違反を理由とする懲戒処分としての解雇をいいます。

 

 

 

2 解雇の制限

上記1で述べたとおり,使用者が労働者を解雇することは民法上原則として自由なのですが,解雇は労働者の日常生活に重大な打撃をもたらすものです。そこで,労働関連各法は解雇について使用者に種々の制限を加えることにより,労働者の保護を図っています。

 

 

⑴ 手続上の制限

ア 解雇制限

法は,使用者は,労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間,並びに,産前産後休業の期間及びその後の30日間は,労働者を解雇してはならないと規定しています(労働基準法第19条1項)。

これは,労働者が業務上災害の場合や出産の際にも安心して会社を休めるよう保障したものです。もっとも,これには例外もあります(使用者が業務上疾病について打切補償を支払った場合や,天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合がこれに当たります。)。

 

 

イ 解雇予告

法は,解雇に伴う労働者への経済的損失を和らげるため,使用者が労働者を解雇しようとする場合においては,少なくとも30日前にその予告をしなければならないと規定しています(労働基準法20条1項)。もっとも,これにも例外があります(天災事変その他やむを得ない事由に基づく場合や,労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇がこれに当たります。)。

 

 

⑵ 解雇理由に着目した制限

ア 法令による制限

法は,差別的な解雇を禁止し,また,労働者による法律上の正当な権利行使を理由とする解雇を禁止しています(各種法令)。

 

 

イ 就業規則等による制限

法は,常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則に解雇事由を記載しなければならないと規定しています(必要的記載事項,労働基準法第89条3号)。

そして,就業規則に解雇事由が定められた場合,裁判例においては,これを限定列挙であると解釈するものが大半です。すなわち,定められた解雇事由以外の理由に基づく解雇を無効とします。そのため,使用者としては,解雇事由を慎重に定める必要があります。

 

 

ウ 判例による制限

従前より,判例は,使用者が労働者に対して一方的に行う解雇について,大きな制約を加えてきました。

 

 

ⅰ 解雇権濫用法理

判例は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない解雇は,権利の濫用として無効としています。このことは,労働契約法第16条で明文化されています。

 

 

ⅱ 整理解雇の法理

整理解雇とは,使用者側が,経営上の理由により人員削減の手段として行う解雇をいいます。このように,整理解雇は,労働者側の事由を理由とした解雇でないことから,判例は,他の解雇と比べてより厳しい制約を課しています。

 

具体的には,以下の4要素を総合的に判断することにより,整理解雇の有効性を慎重に検討することになります。

 

 

① 人員削減の必要性

これについては,裁判例上,使用者側の経営判断が尊重されることが多いです。経営上の理由により人員削減の必要性があれば,裁判所が企業の経営実態に細かく踏み込んでまで判断することは差し控える傾向にあります。

 

 

② 解雇回避努力の有無

整理解雇以前に,使用者が他の合理的な代替手段をとって真摯に解雇を回避する努力を行っていたかどうかが判断されます。

 

 

③ 人選の合理性

使用者が客観的・合理的な人選基準に従って公正に解雇される者を決定したかどうかが判断されます。

 

 

④ 手続の妥当性

労働協約や就業規則に解雇に関する規定があればそれに則った手続を履践する必要があり,また,労働者に対して十分な説明をし,その納得を得るために誠実に協議したかどうかが判断されます。

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